コラム
Column
2024.09.19
SBTiとは?目標とメリットから企業取組事例まで詳しく解説
気候変動対策に有効な国際的なイニシアチブ「SBTi(Science Based Targets initiative)」をご存じでしょうか。SBTiとは、企業に対して「科学的根拠に基づいたGHG(温室効果ガス)削減推進」を求める国際的なイニシアチブです。
経営戦略に脱炭素化推進が欠かせない時代、企業にとって国際イニシアチブへの参加には大きなメリットがあります。
本記事では、SBTiの概要から認定取得方法、企業にとってのメリットまで詳しく解説しますのでぜひご一読ください。
目次
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【再エネ取り組みロードマップ紹介】
資料ダウンロード弊社での導入事例を元にRE100達成までの
道のりをご説明します。 -
SBTiとは
SBTiとは2015年のパリ協定をきっかけに設置された国際イニシアチブで、正式名称は「Science Based Targets initiative」です。SBTは、日本語で「科学的知見に基づいた目標」または「科学的知見に整合した目標」と訳されます。
「initiative(イニシアチブ)」とは、「先導」「主導」を意味します。つまりSBTiは「科学的知見に基づいた目標」により、企業のGHG削減促進を主導するための国際的なイニシアチブです。
SBTi運営機関
STBiは下記の4つの機関により共同運営されています。
機関名 | 概要 |
---|---|
CDP | 気候変動、水、森林に関連する環境問題について、企業が取り組んでいる情報を開示するために英国で設立された国際的なNGO |
国連グローバルコンパクト(UNGC) | 国連と民間が手を結び、「人権」「労働」「環境」「腐敗防止」の4分野で、健全な社会を築くためのサステナビリティイニシアチブ |
世界資源研究所(WRI) | ワシントンDCにある地球の環境と開発の問題に関する政策研究と技術的支援を行う独立した研究機関 |
世界自然保護基金(WWF) | 生物多様性の保全や再生可能な資源利用、環境汚染問題等、世界約100カ国以上で活動する環境保全機関 |
またSBTiは「We Mean Business」の取組の一つです。
「We Mean Business」とは、気候変動対策を推進している企業や投資家による国際機関や等が構成機関となって運営しているプラットフォームです。
SBTiの目的はパリ協定に準拠
SBTiが創設された背景にはパリ協定の存在があります。SBTiが企業に求めるGHG排出量削減根拠はすべてパリ協定に基づきます。
パリ協定で合意された削減目標
パリ協定はGHG排出量削減に関する「国連気候変動枠組条約締約国会議(COP)」で合意された京都議定書の後継となる取り決めです。2015年にパリで開催されたことからパリ協定と呼ばれています。
パリ協定は気候変動対策において次にあげる具体的な目標を定めたことで、「歴史的な合意」とされました。
・世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力を行う
・そのためには、可能な限り迅速に世界のGHG排出量をピークアウトし、21世紀後半までに、GHG排出量と吸収量のバランスをとる
SBTとSBTiの違い
SBTとはあくまでGHG排出量削減の目標や基準のことであり、SBTiとは国際的なイニシアチブを指します。
名称 | 概要 |
---|---|
SBT(Science Based Targets) | 意味は「科学と整合した目標」 地球温暖化を抑止するための指標そのもののこと。 具体的にはパリ協定の数値「1.5度基準」と 整合した目標のことを指す |
SBTi(Science Based Targets initiative) | 2015年にWWF、CDP、世界資源研究所(WRI)、国連グローバル・コンパクトが共同して設立した国際的なイニシアチブのこと。企業や金融機関が最新の気候科学に沿って科学に基づいた目標を設定できるようにするための基準、ツール、ガイダンスを提供している機関 |
SBTiの目標設定基準
SBTiの最終的な目標はネットゼロを達成することです。ネットゼロとは、「大気中のGHG排出量を吸収量や除去量と相殺し実質ゼロにすること」です。
短期目標と長期目標の基準
パリ協定から多くの企業が経営方針にネットゼロを掲げました。しかし多くは曖昧なルールのもと実施され限定的な結果に終わっています。そのため、2021年SBTiは短期目標の他に、新たに⾧期のネットゼロ目標の基準を発表しました。
SBTiのネットゼロ基準は、1.5℃目標実現確率が高いと予測されるシナリオを基に作成されています。自社の排出量だけではなくサプライチェーン全体(Scope1+2+3)の排出量も対象となりました。
【短期目標(Near-Term)】
短期目標では5〜10年間のGHG排出量削減目標としてパリ協定に沿った「1.5℃基準」でScope1+2を年間で4.2%、Scope3は総量を年間で2.5%削減しなくてはいけません。そして短期目標を達成した場合は新たな短期目標の設定をして、長期の目標に備えることが必要です。
【長期目標(Long-Term)】
長期目標では、「1.5℃基準」に沿って2050年までかそれ以前までにScope3において90%以上の排出削減実施が必要です。またネットゼロ目標を達成するまで「1.5℃基準」に基づいた削減を実施することが求められます。
これらの目標は現時点のものであり、気候変動の状況によってはネットゼロ基準改訂の可能性が高く、今後も注視していくことが重要です。
サプライチェーンでの削減を目指す
SBTiはサプライチェーン全体の排出量削減を求めています。サプライチェーン排出量とは、事業者自らの排出だけでなく、事業活動に関係するあらゆる排出量の合計を指します。
サプライチェーンの削減目標はグローバルルールであるGHGプロトコルの指標に準拠します。サプライチェーン排出量はScope1+2+3の合計で算定されるため、全社的にScope1.2を包括した取り組みを行わなくてはなりません。
また、企業の関連するScope3の排出量が、Scope1.2.3の合計の 40%以上だった場合は、Scope 3についての 目標を決めることが必須です。
世界と日本のSBT普及状況
ここでは世界と日本におけるSBTの普及状況をご紹介します。
各国のSBT認定取得状況
2024年時点でSBT認定取得数の多い国をランキングでご紹介します。日本は現在取得数でトップとなっています。
順位 | 国名 | 取得数 |
---|---|---|
1 | 日本 | 930 |
2 | イギリス | 793 |
3 | 米国 | 511 |
4 | ドイツ | 280 |
5 | スウェーデン | 235 |
6 | フランス | 227 |
7 | デンマーク | 169 |
8 | 中国 | 158 |
9 | インド | 156 |
10 | スイス | 115 |
引用:WWFジャパン「日本企業SBT認定・コミットが1000社超え」
日本の業界別SBT認定取得状況
業界別にSBTを取得している企業をいくつかご紹介します。
業種 | 企業名 |
---|---|
建設業 | 安藤・間/熊谷組/ジェネックス/清水建設/住友林業/積水ハウス/大東建託/大成建設/大和ハウス工業/高砂熱学工業/東急建設/戸田建設/前田建設工業/LIXILグループ |
食料品 | アサヒグループホールディングス/味の素/カゴメ/キリンホールディングス/サントリー⾷品インターナショナル/サントリーホールディングス/⽇清⾷品ホールディングス/⽇本たばこ産業 /不⼆製油グループ/明治ホールディングス/ロッテ |
医薬品 | アステラス製薬/エーザイ/大塚製薬/小野薬品工業/参天製薬/塩野義製薬/住友ファーマ/第一三共/大鵬薬品工業/武田薬品工業/中外製薬/日本新薬 |
小売業 | J.フロントリテイリング/アスクル/イオン/上新電機/ファーストリテイリング/ファミリーマート/丸井グループ/ユナイテッドアローズ |
引用:環境省 グリーン・バリューチェーンプラットフォーム「SBT 詳細資料」
SBTiのメリット
企業にとってSTBiに参加することは多くのメリットがあります。ここでは次の3つの視点からメリットを解説していきましょう。
企業の再生可能エネルギー促進につながる
グローバルサプライチェーンへの影響
ステークホルダーへのアピール
企業の再生可能エネルギー促進につながる
地球温暖化を抑制するためには、企業の化石エネルギー使用により大量に排出されるGHG削減への努力が何より重要です。SBTiの取り組みはエネルギー使用の見直しにも結びつくため、自社による再生可能エネルギー導入や省エネ化を促進させます。
企業の再生可能エネルギー促進は持続可能な社会構築に大きく貢献し、社会の利益も向上させるでしょう。
グローバルサプライチェーンへの影響
前段でご紹介した通り、STBiはサプライチェーン全体での気候変動対策を推奨しています。グローバルに展開するサプライチェーン排出量を削減することは地球温暖化の問題を大きく解決する可能性を秘めています。STBiに参加することは地球規模で環境貢献を実施することが可能です。
ステークホルダーへのアピール
SBTの認定を取得することはステークホルダーに広く自社の環境活動をアピールすることにつながります。SBTは最新の気候科学に基づいた目標設定のため、信頼性が高く投資家の注目を集めます。
パリ協定以降、金融機関や投資家の脱炭素化に向けた取組は活性化しており、ネットゼロに向けての取組が不十分な企業に対して投融資されない可能性も表れています。投資家に注目されることは、自社のESG投資の可能性も高めます。
SBTi参加企業の事例
ここでは実際のSBTi参加企業事例をご紹介します。
大塚製薬株式会社(医薬品)
大塚製薬株式会社はCO2削減に対して次の目標を掲げ、2019年にSBT認定を取得しました。
2030年までに温室効果ガスの排出量(スコープ1+2)を2017年比で30%削減
2030年までに温室効果ガスの排出量(スコープ3)を2017年比で20%削減
これらの目標実現に向けさまざまな取組を実施。具体的にはCO2フリー電力の導入及びグリーン電力証書の活用等で、2022年の再生可能エネルギー導入率68%を達成しています。
ファミリーマート(小売り)
ファミリーマートは、2030年までに2018年比でScope1.2の排出量を30%削減することを掲げています。そのための取組として、省エネ設備導入と電力の再生可能エネルギー化への推進を図りました。
Scope3の排出量は2030年までに2018年比で15%削減を目指しています。またサプライヤーとの連携により、容器包装の軽量化や環境配慮型素材の導入等を実施しました。
引用:環境省グリーンバリューチェーンプラットフォーム「業種別取組事例一覧」
SBTiへの参加方法
企業がSBTの認定取得をするための基準や流れを解説していきます。
SBT認定基準
SBT認定の条件は次のようになります。
産業革命以降の気温上昇を、2℃未満もしくは1.5℃未満に抑える、というパリ協定に整合したGHG排出削減目標を定める
毎年2.5%以上の削減を目安として、5年〜15年先の目標を設定
自社だけではなくサプライチェーン全体でのGHG排出量の削減を実施
認定取得後も目標の妥当性の確認や対策状況の報告する
他のカーボンクレジットの取得による削減等は、SBT達成の削減に加えることはできない
SBT申請の流れ
SBT申請の流れは次のようになります。
1. Commitment LetterをSBTの事務局に提出(任意)する
2年以内にSBT設定するという宣言を行う
SBT事務局、CDP、WMBのウェブサイトにて公表する
2. 目標を設定し申請する
Target Submission Formを事務局に提出する
3. SBT事務局による目標の妥当性確認・回答(有料)が行われる
事務局は認定基準に沿っているかを審査し、メールで回答を行う
4. 認定を受けた場合はSBT等のウェブサイトにて公表する
Target Submission Formを事務局に提出する
5. 排出量と対策の進捗状況を、年一回報告し、開示する
6. 定期的に、目標の妥当性の確認を行う
必要に応じ目標を再設定し、最低でも5年に1度は再評価を行う
まとめ:SBTiに参加して環境価値を高めよう!
脱炭素化を推進する国際的なイニシアチブSBTiについてさまざまな視点から解説しました。企業がSBTiに参加することは、ネットゼロや環境に貢献するだけではなく、新たなイノベーションやビジネスへとつながるチャンスでもあります。
社会的価値を高め利益を向上させたい企業担当の方は、本記事を参考にぜひ自社のSBTi参加を検討してみてください。
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